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2013年09月07日

メンタルヘルス研修


先日参加しましたメンタルヘルスの研修についてです。
福岡産業保健推進センター(厚生労働省の外郭団体の
福岡県の出先)の主催

テーマは「職場のメンタルヘルス対策最前線-ゆとり世代
社員、高齢者継続雇用、海外派遣における課題と対応-」

講師は、(株)産業医大ソリューションズ 代表取締役で
医師の亀田高志先生でした。


お話しは、今までのいわゆるメンタルヘルスの内容に
とらわれない新しい切り口でしたが、亀田先生のユーモアと
深い造詣も交えたもので楽しく聞くことができました。


一番印象に残ったのは、最近の若い社員の実例。

・新入社員の1割が新人研修中に診断書を出して休業
・最も優秀と思っていた社員が、突然病気を理由に休みだす
・メンタルで休職中の社員が、海外旅行で楽しんでいたことが
 判明
・仕事に慣れさせるためにしばらく客先で訓練していた
 社員がすぐに辞めてしまった

ある程度分かっていたつもりですが、実例をこれだけ
聞くと衝撃的ですね。
ここで出てきたのが「ダイバーシティ」。要は若手社員を
価値観の違う多様な人材の一つととらえて、いかに
活用、育成するかを考えなさいということでした。


若手だけでなく、高齢の社員、海外派遣の社員、
それぞれに問題が起きています。
これまでの日本の会社は、問題への対処と健康
診断の実施を中心においていたが、これからは
それだけでは対応できない、もっと根本的な
問題解決が必要というのが、亀田先生のお話しの
結論だと思います。

根本的な問題解決とは何か…
どのように考えればよいかというお話もありましたが、
さらに現場レベルに落とし込んだ具体的な対策を
お聞きしたい、自分でも考えてみたいと思う研修でした。



(以下は参考)研修で印象に残った内容のメモです。
1 メンタルヘルスとは何なのか?

健康とは:完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態 単に疾病または病弱の存在しないことではない(WHO憲章前文)
↓見直し提案
健康とは:完全な身体的、精神的、霊的(人間的:spiritual)及び社会的に完全に安寧な状態…

職業性ストレスモデルだけでいいのか?:ストレスは病気を起こし、悪化させる要因だが、それだけなのか。生物学的な解釈だけでは不足。通常の精神医学のアプローチでは、起きている病気が何なのか不明確。

       ストレスの強さ
           ↓
職場のストレス→→個人のストレス反応→→病的レベル→メンタル不調
           ↑                        →心身症
       支援の有無                     →問題行動


ストレス関連障害は職場のメンタルヘルスの中心問題。現在は、古典的なうつ病、統合失調症も職場のメンタルヘルスの問題として扱われている。現代的なうつ病のグループには、ストレス関連障害だけでなく古典的うつ病も含まれている。

原因を基点とする精神疾患の分類
1 外因性:外傷や脳内の病気が影響
2 心因性:環境要因(ストレス等)が影響
3 内因性:現段階では原因不明

DSM-Ⅳ(診断基準)
・病名のつく状態
・パーソナリティの偏り
・身体の病気
・取り巻く社会的、環境面の問題
・その人のもつ機能的評価
 →多軸評定:ストレス→発病への疑問

職場のストレスは生産性を下げる。ストレスを強く感じている人は、仕事に集中できていない。→平均10%もの労働損失

メンタルヘルスの裏側はモチベーション。日本の従業員のモチベーションは低い。日本の雇用、人事の問題が大きい。リストラの悪影響は大きい。
→ここまで考えてメンタルヘルスの問題を考える必要がある。

日本の産業保健の特徴
 ・法令中心:全労働者への健康診断
 ・医療モデル中心:医学スクリーニングから事後措置を医師、看護師が担う
 ・事業者(会社)責任主義:法令は事業者責任・義務を強調
⇒強み:職業病への対処、健診と保健指導、不調者へのケア、相談対応
 弱み:生産性の観点での健康向上、危機における救急対応と病気以外の管理、海外拠点での健康問題
    ↓
  違いは法令の有無

健康とは経営資源である人的資源の一部
高い生産性を発揮できる、よいコンディション、モチベーション・強靭さがおろそかになっているのではないか。

メンタルヘルスとは何か?
不調者、あるいは付随する問題だけではない。
企業の戦略を実現する(儲けるための)人的資源を構成する一つの重要な要素
そうしたメンタルヘルスに産業保健に何ができるのか?
 →問題の捉え方の変更、問題解決の手法の変容、視座・立場を変えていくこと


2 若手(いわゆるゆとり世代)の問題と対応

問題(2010年以降)
新入社員の1割が新人研修中に診断書を出して休業
唐突にこれからのキャリアや会社の自分に対する考え方を教えるよう迫る
もっとも優秀と考えていた若手が突然病気を理由に休職
休職中の若手が海外旅行していたことが判明
内定者同士の交流や懇親会が自主的に行われない
客先に置いていたらすぐに辞めた

研修中1割、1年で3割がドロップアウト
現在の水準と会社側の期待レベルとの間に大きなギャップが存在する

若手のメンタル不調が増えるわけ:少ないストレス体験、脆弱なストレス耐性、脆弱または過剰な支援  
↓  
新型うつ、適応障害、不定愁訴、パーソナリティ障害、キレる、薬物その他

大人が知らない就職活動
 ・自己分析
 ・自己PR
・エントリーシート
・企業数が20~30超
・マナーや敬語を改めて学ぶ
→「自分の学生時代や体験が高く評価され、自分のエントリーシートに書いた希望職種や夢の実現が会社側に期待されている」という認識を持っている。

若手問題の要因と誘因
要因:学校教育の基本的な能力、コミュニケーション能力、悪しき生活習慣、価値観や考え方
誘因:理念・方針の欠如、採用プロセス、内定後の対応、管理職層の無理解(会社への悪口)、善悪の判断、計画性のなさ(ゴールが設定されない)
→会社として理念、方針が定まっていないのではないか。(なんとなく採用。「こんな人がほしい」ではなく、「優秀だから」ということで採用している)

若手の育成は人材の多様性の一つ(ダイバーシティ)→日本人としてのダイバーシティの経験の一つ
ダイバーシティとは?
単に女性、高齢者、障害者だけではない。組織存続のためには多様な人材を受け入れ、活力や創造力を保つ
どうして年長者と比べて若手は劣るのか
日本の若手は世界に存在する若者の一部。たまたま日本語を話し、日本の文化を理解できるだけ
日本人の多くは「つなぎ人材」に過ぎない(グローバル人材になりえない)
  ↓
ゴールを見据えること(どんな人材に育てるのか、できれば利害を離れて)

これからの若手問題対策:建前をやめて本音で対応する
企業サイド
・どのような人材が必要かを考えること
・企業の本当の情報を正確に学生に伝える
・横並びではなく自社にふさわしい採用の方法を考える

年長者
・就職活動と就職は異なる
・指導するより、聴く(傾聴)すること
・理解させるのではなく理解すること
・具体的な表現

若手の問題と対応とは
方針:どんな人材を活用するか
採用:自社に必要な人材とは
育成:どんな人材に誰がどのように育てるのか
配置:どんな仕事にどんな目標を立てどんな評価をするのか
実践:管理職への啓発、キャリア計画、研修計画


3 70歳定年の時代における対応
高齢者とは
55歳以上:高齢労働者
65歳以上:高齢者
15歳以上64歳以下:生産年齢人口
   日本は超高齢社会

背景1 法改正:65歳までの雇用確保措置の義務化
背景2 少子高齢化が止まらない
背景3 希望者全員が65歳までの雇用を義務化 国でも年齢にかかわりなく働ける社会の実現を目指す→生涯現役社会の実現へ

産業保健はどの立場をとるのか
 国:財政悪化に伴う理由、多くの高齢者が働き、税を納めてほしい
経営者:経済的理由、必要な人材ならほしいが不必要な場合はいらない
個人:喜んで働きたい 経済的理由

産業保健の役割の変容
・エンプロイヤビリティ向上への貢献
労働者が企業にとって魅力のあるスキルや経験を持っていること
・ワークアビリティの向上
労働に対する総合的な能力
健康→能力→姿勢・動機付け→労働そのもの 
既存は健康のみ。これからはすべての段階が産業保健の対象
     →ステレオタイプからの脱却が必要

これからの高齢者問題対策⇒経営理念や人材に対する考え方の明確化
企業
・従業員と会社の関係
・どのような人材が必要か
各世代
・統括管理(人的資源管理と産業保健の統合)
・健康管理(疾病対策充実)
・作業・作業環境管理(機能低下への対処)
・労働衛生・健康教育(ワークアビリティの全段階に対応)

どのように対応するか
方針:どのように取り扱うのか
育成:何を求めていくのか
配置:どんな機能を求めるのか
制度:職務の再設計
実践:啓発・キャリア計画、研修、環境面投資


4 海外赴任者の問題と対応
人事部門の悩み
・個人:病気持ち、不適応、家族の問題
・職場単位:人間関係トラブル、問題行動
・海外拠点単位:操業に影響する様々な危機

個人単位
法令の規制はない
健康に対する面談を現地で実施

職場単位
人間関係トラブル(日本人間、日本人と現地社員)
使い込み
買春行動

現地法人単位
台風、洪水、反日デモ、テロ、感染症など

本質的な問題
温度差:本社の経営層と現地法人責任者
    日本人赴任者と現地従業員 
経営的な必要性と現地での力加減
現実的な問題:赴任が増える一方で企業と個人の側の心構えや準備は不十分

これからの対策
企業
現地拠点等の位置づけと重要性を見直す
どのような人材が適性なのかをよく考える

従業員
異文化への適用を支援する仕組み(産業保健としては、疾病対策、リテラシーの向上)
パラダイムを変える(地域関係なく広がっていく覚悟、産業保健の対応は)

海外赴任者の問題と対応は?
方針:人材をどのように活用するか
育成:海外適応をどのように促進するか
配置:どんな人材をどのように活用するか
現地化:グローバル化=ローカル化
実践:問題への対応をどのように実践?


まとめ
メンタルヘルスの問題を心の健康や健康管理の枠組みではなく、人材の問題として捉えなおす
課題と本質的な対策を模索
  


Posted by 早田 晋一 at 12:37Comments(0)イベント報告