2013年10月07日

「残業代ゼロ」制度って?

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【「残業代ゼロ」制度とは?】
最近になって、また「残業代ゼロ」制度に関連する記事が取り上げらる
ことが多くなってきました。
この制度、「ホワイトカラー・エグゼンプション」とも言われます。
たとえば、最近の新聞では‥


  課長級から勤務柔軟に 政府、時間規制に特例 年収800万円超 トヨタや
  三菱重に打診(日本経済新聞 2013/8/15)

  労働時間規制に特例  一部企業で実験導入検討  「過労死招く」労組反発
  (共同通信 2013/08/16 )

  政府、「残業代ゼロ」特区導入を断念(2013/10/5 読売新聞)


この「ホワイトカラー・エグゼンプション」、以前聞いたことがある
という方もいると思います。
実は第1次安倍内閣の2007年に検討され、労働組合などが
「残業代ゼロ」にする制度と反発して見送られたものです。

一見すると給料の支払をめぐる制度のように思われますが、
実際はそうではなく、労働時間や休日の制度の問題です


【法律上の労働時間の制度】
労働時間については、法律的には、1日8時間、1週間40時間
以内にすることが定められています

これが原則で、一部柔軟な働き方が認められています。
(変形労働時間制度、みなし労働時間制度など)

そして、この労働時間の原則を超えて働き、時間外労働が
発生した場合には、会社は一定の割増率を加えた残業代を
支払わなければならない
とされています。(休日の場合も同様)


一方、次のような方は、そもそも労働時間や休日などに
関する定めは適用されないとされています。

 ・管理監督者(重要な職務、責任を持った管理職)
 ・機密の事務取扱者(役員の秘書などの業務の方) など

このような方は、労働時間や休日の定めを適用しなくても
よいことから、1日何時間働こうと、休日に労働しようと、
残業代は支払う必要はない
ということになります。
(ただし、深夜の労働に対する支払は必要)


【「ホワイトカラー・エグゼンプション」の仕組み】
今回検討されている「ホワイトカラー・エグゼンプション」、
まだ検討段階なので詳細は今後になってきますが、
一定水準以上の収入がある方について、労働時間の
定めが適用されないことになるようです。

結果として、時間外労働などに対する残業代の支払いが
不要になるということです。
この点は、上記の管理監督者などに近い仕組みに
なるのではないでしょうか。


【今後どうなるの?】
この「ホワイトカラー・エグゼンプション」をめぐっては、前回も
反発が強く見送られた経緯があります。
それを教訓としてか、今回は一律の法律の制度ではなく、
産業競争力の強化のための規制緩和の一環として、一部の
大企業への実験的な導入が目指されています。
そこで成果を残して、範囲を拡大していく方向ではないかと
思います。

ただ、今回の動き、管轄する厚生労働省でも抵抗が強いようで、
政府と経済産業省などが主導しているようです。
そのため、今後どのようになるかまだまだ分かりませんが
動向には注目しておく必要がありそうです。


ところで、この「ホワイトカラー・エグゼンプション」について
どのように考えればよいのでしょうか。
現実問題として、現在の法律上の制度だけではなじまない
働き方が出てきているのも事実だと思います。

ただ、一方で長時間の労働による健康管理の問題(過労死・
過労自殺やメンタルヘルス不調)が発生、拡大
していることも
見逃せません。
たとえ残業代を払わなくてよくなっても、企業で健康管理の
問題が発生すれば、莫大な損害賠償を求められるなど
大きなリスクになります。
労働基準法の制度は適用されなくなりますが、企業が
従業員の健康などに配慮する義務がなくなるわけでは
ない
からです。


「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入に際しては、こうした
健康管理の問題にしっかりと有効な対策がとられないと、
結局リスクは解消せず、有効な仕組みにはなってこないと
思います。



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Posted by 早田 晋一 at 10:00│Comments(0)雑感
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